入場料金がなんと8400円もした。
悲しい場面であればあるほど観客が笑うという、おそらく脚本家井上ひさし自身の企みが見事に成功していたと思う。これはマジしゃれにならんというような悲しい場面が何度もでてきてそのたびに客が笑っている。それが許される。これは極上の演劇ならではの世界なのかもしれない。
私がいままでにみた演劇のなかで一番よかったとおもう。もし15年前にこれをみていたら私は演劇を続けていたかもしてない。(サザンシアターの隣りに東急ハンズがあって開演前にのぞいたら本格的な大道芸人グッズがあって衝動買いにかられるのを抑えるのに苦労するほど熱しやすくさめやすい私なのでいいすぎかもしれないけど)
主人公樋口一葉の役は小泉今日子だった。
小泉今日子にはじめて出会ったのはあれはたしか中学生のとき友人の部屋だったと思う。中学生にとっては高価といえる小泉今日子の写真集をみた時はまさかこの人がキョンキョンとよばれ後にこれほどまでにビックスターになろうなどとは知る由もなかった。
前から5列目のどばん中の席からみていると、キョンキョンもオレも歳をとったなーと感無量だった。
開演13時半から15分の休憩をはさんで16時半までの長い芝居。開演の幕が上がると最初キョンキョンは子役としてでてくる。そしてその後すぐに19歳としてでてくる。それから夭折する24歳までの毎年、その後幽霊となってから二年。場面は常に7月16日のお盆の夕方という舞台設定。
登場人物は6人全て女性。実力ある舞台女優にかこまれてキョンキョンはかなりハードな役をこなす。写真集でみたあのキャピキャピさはもちろんなく、極貧、病弱の役柄からユーモア―を醸し出す。キョンキョンはじめ6人の女優たちと共にした3時間は濃密で最高のひと時だった。
はい、そこでそろそろ、この、「頭痛 肩こり 樋口一葉」という芝居と「たこの木クラブ」となんの関係があるのかという問題にとりくみたいところだが、このあたりの問題は私にとって個人的な大テーマである気もしてまあ追々じっくりと今後考えていけたらなと思う。
それにしてもこの芝居ほど泣きながら笑った芝居はなかった。芝居にかぎらず人生においてもこんなに泣きながら笑ったことはなかったかもしれない。
悲劇と喜劇の接点。そして生と死の接点あたりをうろうろするようなホントにそんな芝居だった。
オレもキョンキョンも人生の折り返し地点をすぎている。そう思わされた芝居でもあった。
この芝居のラストシーンは一葉のふたつ年下の妹がひとりこの世に残される。このラストシーンについてこれ以上書くのは控えさしてもらう。10時にサザンシアターにいけば当日券が手に入ると思うので是非西山さんや若い人にも見てもらいたいと思う。8400円以上の価値はあると思う。